上嶋 菜摘(Natsumi Ueshima)   平成23年博士後期課程満期退学

 

 

乳幼児期の子どもに関心があり,大学院在籍時より,地域の小児科や大学病院の周産期センター(産科およびNICU),保健センター,子育て支援センターなどで心理士としてかかわってきました。

子どもを対象とした仕事としては,発達に偏りやつまずきを抱えた子どもに対して,発達援助を目的として個別にかかわったり,親子教室や療育グループのように集団に対してかかわったりしていました。子どもは,変化や反応が速く,心理士がほんの少しかかわるだけで良くも悪くもすぐにリアクションを返してくれます。それは,打てば響く,という言葉がぴったりなのですが,的を得ていなければ(心理士が打ててなければ)響きません。つまり,乳幼児期の子どもにかかわるためには,思春期や青年・成人期の心理臨床と比べて,子どもの発達や課題をきちんとアセスメントした上で,個々の子どもが必要としているニーズに対してその場で応じていく力が特に求められている領域であるように思います。

また,子どもは(まだ生まれたばかりの赤ちゃんだとしても!),大人との言語面接よりもはるかに直球でリアクションを返してくるように感じています。そのため,1回のセッションの中で瞬時の反応を求められることが多く心理士のセンスと機転が試される領域でもあるように思います。このようなタイプの臨床を難しいと感じるか,魅力と感じるかは好みが分かれるようです。個人的には,子どもがいつ・どの瞬間においても全力で生きていることや心理士としてかかわる手応えを感じられ,乳幼児期の子ども達の臨床の魅力であると感じています。

子どもにかかわる領域では,子どもの発達や行動に対して何らかの心配や問題を感じて相談を申し込んだお母さん・お父さんとの面接も欠かせません(以下,面接に来られることが多いので,お母さんに統一します)。大人を相手とした面接ですが,○○くん・○○ちゃんのお母さん・お父さんとしてお会いしていく点で通常の心理面接とは異なります。お母さんに初めてお会いする時には,多くの場合,子どもの発達の問題や問題行動,あるいは子どもの病気の具合に気持ちがむけられています。それは,子どもを心配する親として当然であると思います。ただし,乳幼児期は,親と子が関係を築いていく上で大切な時期になります。子どもの障害や病気は(少なくとも短期的には)なくなるものではなく,目の前の子どもと共にあり続けます。そのため,親面接では,問題の解決や受容に焦点を当てるよりも,障害や病気の心配によって見えにくくなっていた○○くん・○○ちゃんとの関係を築いていく視点をもってかかわっていくことになります。このように,親面接においても,乳幼児期の臨床では他領域とは異なる専門性が必要であるように思います。

大学院併設の相談室では,乳幼児期の子どものプレイセラピーや親面接に限らず,思春期の不登校や非行に関する相談や成人期の生き方や夫婦関係に関する個人面接など多種多様なケースを担当する機会がありました。学外での仕事に比べて大学院の相談室は、相談内容も子どもの年齢の幅も広く,スーパーバイズやケースカンファレンスといった指導を通して臨床家として幅広い経験をすることができました。そして,様々なケースを通して,乳幼児期という領域の特殊性や専門性を見直す機会にもなったように思います。

 

      渡辺 美穂(Miho Watanabe )   平成23年修了  

 

児童相談所で児童心理司として勤務しています。

児童相談所では18歳未満の児童の相談を受け付けており,私は主に子どもの面接・カウンセリングを担当しています。

また,他にも保育園の巡回相談等も行っています。

永田研究室では和気あいあいとしながら,乳児期の発達を中心に学んでいました。

現在の仕事にもそれが役だっています。